この記事はIoTLT Advent Calendar 2018 neoの12月9日の記事です。
自己紹介
カサネタリウムという名前で活動しています。
作品はこちらのホームページに掲載していますので、見てみてください。
(目的地の方向に傘を倒す装置「カサナビ」などを作りました。)
現在、歯ぎしりを改善する装置を開発中です。
今回のAdvant Calendarにはそのことついて書きました。
まだまだ開発段階の物ですので、記事を読んで一緒に作りたい!という方がいましたら、ぜひお声がけください。
歯ぎしりとは
歯ぎしりとは睡眠中に歯を横にすり合わせたり、強く食いしばったりする現象である。歯ぎしりは周りを不快にするだけでなく、歯がすり減り、知覚過敏を引き起こす原因の一つとも言われている。
歯ぎしりの対策
「歯ぎしり 原因」、「歯ぎしり 対策」と検索すると、多くの場合、「ストレス」という答えが返ってくる。歯ぎしりを治すにはストレスコントロールが必要のようだ。ストレス社会に生きる我々現代人がストレスから解放された生活を送るなど、到底無理な話である。
現在、歯医者に行くと、歯ぎしりの対策として「マウスピース」をつけて寝るように進められる。これは歯ぎしりによって歯が削れる代わりにマウスピースが削れるというものである。すなわち歯ぎしりを治す根本的な解決方法ではないのだ。現に私も毎晩マウスピースを着用して寝ている。
今回、ものづくり(Maker)の観点から歯ぎしりの対策を考えた。
Maker的な歯ぎしりを改善方法
歯ぎしりの原因をなくすことはのは医師でも難しいことであり、Makerでも無理だろう。そこで歯ぎしりは起こるものとして、その歯ぎしりを検知して、歯ぎしりを抑制する方法を考えた。
①歯ぎしりの検知
まずマウスピースの中に感圧センサーを仕込み、噛む力を物理的に取得する方法を検討した。
(写真は市販のLEDが内蔵されたマウスピース。検討段階で購入した。)
しかし歯ぎしりの力でセンサーごと噛み砕いてしまいかねない。(歯ぎしりにかかる力は体重の2倍とも、数tとも書かれており、口の中にデバイスを入れた場合、本当に砕きかねない。)
そこで、物理的に力がかからない方法として筋電センサーを用いることにした。
筋電センサーのイメージは次の通りだ。筋肉は脳からの電気信号を受けて収縮する。その信号をセンサーで取得する。
まず、筋電を簡単に取得できるか実験してみた。
動画のように筋肉に力を入れているところを簡単に可視化することができた。
筋電センサにはMyoWareを使用した。筋電をマイコンを使って簡単に取り出すことができる。(筋電の生データだけでなく、整流してとても扱いやすい信号としても取り出せる。元々はKickstarterで出資を募っていたものだが、今ではスイッチサイエンスから簡単に購入できる。)
動作確認には筋電センサからの信号か簡単に見えるように液晶がついた2018年の話題のマイコンM5Stackを使用した。また今回信号を表示するために作ったプログラムはGitHubに上げている。
次にこの筋電センサMyoWareで噛む力を取得できるか実験した(次の動画)。
噛む動作とLEDの表示に注目してほしい。
頬につけた筋電センサによって噛む動作を電子信号として取得できた。
(自分の顔のアップの画に絶えられずサングラスをして撮影したところ、謎のサイバーパンク感がでてしまし、「筋電センサーに集中できない」という意見をいただいてしまった。噛む動作とLEDの光に注目してほしい…)
(※撮影に当たってマウスピースを着用して実験しています。歯を傷つけることになりますので真似しないでください。 )
ここまでで筋電センサ(MyoWare)とマイコン(M5Stack)を使って歯ぎしりの検出ができることがわかった。
②歯ぎしりを止める(抑制)
筋肉は脳からの電気信号を受けて収縮する。ということは筋肉に電気信号を入れてやれば、筋肉は収縮させることができる。
すなわち、歯ぎしりを検知したら、顎が開く筋肉に電気信号を与えて、無理やり口を開いてやれば歯ぎしりが止まるに違いない。
(だんだんマッドサイエンスな感じになってきたような。)
では、口を開く筋肉はどこにあるか。調べると、顎を開く筋肉は首の中にあることがわかった。
これは困った。組みは脳と全身を繋ぐ幹であり、様々な神経が通っている。そこに電気信号を素人が入れることは大変危険である。
筋肉に電流を流して口を開けるという方法は諦めざるを得ない。
色々は方法を調査・検討した結果、リラックスさせるツボを押すことにした。
(手首の付け根にある「内関」というツボのリラックス効果を活用して…。)
ツボを押すパーツは3D CADソフト(Fusion360)を使ってを設計し、3Dプリンタを使って出力した。サーボモーターを使ってツボを押す。
全体の系統
全体の系統を次の図で示す。
実際の動作が次の動画である。(動画では腕の筋肉の信号を使ってツボを押すモーターを制御している。)
夜間の歯ぎしりの発生状況の確認
この装置に夜間の歯ぎしりの状況を記録しておく機能を追加していく。
色々検討した結果、AmbientというIoTデータの可視化サービスを利用することにした。
マイコンに接続したセンサーの数値のデータを、インターネットを経由してグラフ化して見ることができる。無料でしかも簡単に利用できる。
またM5Stackから利用するライブラリや使い方もこちらのページに公開されている。
そのページを参考にしながら、Ambientのアカウントを作り、適当な数値データをAmbientサーバに投げてみた。
以下の図のグラフのように、簡単にデータログをサーバに作り、グラフとして確認することができた。今後、筋電センサから取得する歯ぎしりの数値データをAmbientに送り、睡眠時間中の歯ぎしりの状態を確認して行こうと思う。
最後に
装置はできたものの
- モータまでの配線などが寝ている間に首に巻きつく危険性がある
- ツボを押すのが最善の方法と言えない
- 基板がむき出しのため、ケースなどの工夫が必要
など、まだまだ改善の余地があります。
Maker Faire Tokyo 2018でも展示したところ、「実は私もマウスピースつけて寝てます」、「完成したら買います」など、実は多くの方が歯ぎしりに悩みを抱えていることを知りました。多くの人の応えるためにも、今後も歯ぎしりを改善する装置の開発を進めていきたいと思います