『Magnepick GO』とは
Magnepick GOとはカセットテープの磁気ヘッドを使って、磁石のSNSN…を引っ掻いて演奏する楽器です。 カセットプレイヤーは音の情報を磁石のSNSN…に変えてテープに記録しています。 それを磁気ヘッドを使って読み取ることで再び音として再生しています。 Magnepick GOはカセットテープからの磁気ヘッドを取り出して作った楽器です。 これを使うとカセットテープ以外にも磁石のSNSN…を音に変えて演奏することができます。 例えば
- カセットテープ 、オープンリール、ビデオテープなどの磁気テープ
- 電車の切符に記録された磁気情報
- テレフォンカードに記録された磁気情報
- 板磁石(ポストに届く水のトラブル系の板磁石)
を使って音を取り出すことができます。動画は電車の切符と板磁石を使って演奏した様子です。
Magnepick GO ー 切符の磁気情報と磁石の縞から音を取り出す ー
そのほかに家電製品から漏れ出る電磁波を拾うこともできます。動画はスマホから漏れ出る電磁波を音として取り出した様子です。
Magnepick GO ースマホからの電磁波ノイズを拾うー
Mangnepick GOの組み立ての準備
半田付けが必要になりますので半田付けができる道具一式が必要となります。
- ハンダごて(温度調整機能付き推奨)
- ハンダ(手で触るので鉛フリー推奨)
- 先の細いピンセット
などはご自身でご用意ください。
『Magnepick GO』の製作必要な以下のパーツは配布いたします。(現在準備中)
Magnepick GO基板
右利き用は青色基板、左利き用(Magnepick GO Lefty)は緑色の基板です。
カセットテープ の磁気ヘッド
カセットテープ の磁気ヘッド固定基板
その他に必要となる電子パーツは秋月より購入が可能です。 AkiCartから必要なパーツを一括で購入可能です。
※ダイオード と 1μFコンデンサー は2個ずつ必要となりますが、上記のパーツを購入することで必要個週以上が購入できます。
Magnepick GOの作り方
写真の青色の基板が右利き用基板、緑色が左利き用の基板です。 基板の「Magnepick GO」とプリントされている面が基板の表面、記載されていない面が裏面です。 基板に書かれえている各数字が上記の表のパーツ番号と一致するようになっています。
電池ホルダーの取り付け
U1(表面実装電池ホルダ)を用意します。 2箇所の四角形と電池ホルダの四角形が重なるように重ね、1箇所ずつハンダ付けしていきます。 重なった状態で半田ごてで基板の四角形とホルダーの四角形両方に熱を加えながら、ハンダを流し込むことで固定されます。 ハンダごての温度は無鉛はんだなら320℃が前後に設定します。 取り付けの際に電池ホルダーが高温になるため注意してください。
抵抗の取り付け
R1 (10kΩ)、R2 (1kΩ)を用意します。 基板のR1と書かれた位置に10kΩを、R2と書かれた位置に1kΩをはんだ付けします。 (ちなみに10kΩには「103]、1kΩには「102」と記載されています。103 => 10 ×10の3乗で10kΩ、102 => 10×10の2乗で1kΩです。)
表面実装のパーツのはんだ付けの方法
まず1箇所に予備ハンダをつけます。
ピンセットで対象の電子パーツを掴み先ほど基板に付けた予備ハンダを溶かして固定します。
これで電子パーツが固定されるため、残り一方もハンダ付けします。 以上の要領でR1、R2をハンダ付けしていきます。 ハンダ付けしたあとの基板が次の写真です。
ダイオードの取り付け
D1,D2 (ダイオード)と用意します。 D1,D2には向きがるのでご注意ください。 図のようにダイオードの線が入っている側が基板の「k」の記号が書かれている方になるようにハンダ付けします。(線の入っている方向がダイオードのカソード側になります。カソードは英: Cathode、独: Kathode でダイオードの記号がーK|ーにも見えることから私はkと書くようにしています。)
ダイオードをハンダ付けしたあとの基板が次の写真です。
LEDの取り付け
D3 (LED)を用意します。 LEDのには向きがあるのでご注意ください。 図のようにLEDの緑色のしるしが図のように基板の「コ」の字の折り返し側となるようにハンダ付けします。
ICチップのとりつけ
IC1 (オーディオアンプ)、IC2 (MOS FET)を用意します。 ICには向きがるのでご注意ください。 図のようにICチップの「○」の印が基板のしるしの位置になる向きにハンダ付けします。 他の電子パーツのハンダ付けと同様に1か所だけ先にハンダ付けをして固定したのちに残りの足をハンダ付けすると楽かもしれません。 (カプトンテープなどで固定しても良いと思います)
コンデンサの取り付け
C1,C3 (コンデンサ1μF)、C2(コンデンサ47μF)を用意します。 このコンデンサには向きがありません。
USBコネクタ、イヤフォンジャック、スイッチの取り付け
J1 (USB microBコネクタ(以下、USBコネクタ))、J2 (イヤフォンジャック)、S1(スイッチ)を用意します。 背の低い順 J1、J2、S1の順にハンダ付けしていきます。 スイッチには向きがありません。 イヤフォンジャックは表面に取り付けます。
カセットテープの磁気ヘッドの取り付け
カセットテープ の磁気ヘッドと固定基板を用意します。
磁気ヘッドと固定基板の準備
磁気ヘッドと固定基板を一体化します。 磁気ヘッドから2本のピンが出ているので、図の向きにハンダ付けします。 固定基板には裏表があるためご注意ください。写真のようになるようにハンダ付けしてください。 磁気ヘッドの2本のピンの位置に個体差があるため固定基板はかなりゆとりのある設計にしています。 固定基板が磁気ヘッドに対して斜めにならようにハンダ付けしてください。
磁気ヘッドの取り付け
あらかじめ磁気ヘッドを固定する位置の電極パッドに事前にハンダを盛っておきます。導通を取りつつ、固定もするため、たっぷりとハンダを盛ってください。 写真は基板の表面ですが、裏面にもたっぷり盛ってください。
予備ハンダ後のMagnepick GOの基板と磁気ヘッドを以下の図で示しています。
Magnepick GOの基板と磁気ヘッドの基板を垂直に配置します。
Magnepick GO の基板と磁気ヘッドの固定基板には基板の厚みや基板の中心に位置合わせ用の基準線(白線)が書かれています。 それを基準にMagnepick GO基板と磁気ヘッドのだいたいの位置を合わせます。
事前にMagnepick GOの基板両面に付けた予備ハンダをハンダごてで溶かし、磁気ヘッド固定基板の電極と導通を取りながら溶接します。
予備ハンダを溶かして磁気ヘッドを表面、裏面の両面からしっかり固定します。合計で4か所で固定されます。
磁気ヘッドは次の写真のようにMagnepick GO基板に固定されます。
ジャンパーの選択
最後にジャンパーを配線します。LINEかBTLをハンダで短絡させます。基本的にLINE側を短絡させます。
Magnepick GOはBTL(Bridge-Tied Load)も選択可能です。もしBTLを使用したいときはLINEを短絡させずにBTLを短絡させます。詳細な説明や、用途は以下に記載しておきます。
BTL(Bridge-Tied Load)とは
BTLは反転アンプを使うことで同じ電源を使用しいても通常のアンプの倍の信号出力を得ることができます。 例えばアンプで通常信号が2倍になる場合、BTLを使用することで4倍の出力信号を得ることができます。 しかしこの方法では出力の基準がGNDではなくなるため、出力信号をエフェクタなどに接続することを想定している場合は使用しないでください。 出力をイヤフォンに接続して微小な電磁波ノイズの音を聞くような用途で使用する場合はBTLを使うと良いかもしれません。
爪の除去
カセットテープ の磁気ヘッドにはテープがずれないように爪がついています。 切符などの磁気情報を読む際に邪魔になるため、必要に応じてラジオペンチ曲げる、ペンチで切り取るなどしてください。
完成したMagnepick GO
以上でMagnepick GOは完成です。
Magnepick GOの使い方
ボタン電池(R2032)、またはUSB端子電源(モバイルバッテリーも可)を接続します。(ボタン電池とUSB micro Bの両方から給電されているときな自動的にUSB端子側から消費されるためボタン電池は消費されません。) イヤフォンジャックにイヤフォンやスピーカーを接続します。 電源スイッチをONにします。電源がONになるとLEDが点灯します。(使用後はLEDが消灯してOFFを確認してください。) 持ち方は、利き手の親指で表面の電子パーツが配置されていない部分を、人差し指で基板の側面を、中指で基板の裏面の電池ホルダーを掴むように持つと安定します。
カセットテープ の磁気ヘッドで切符を擦ることで音を取り出すことができます。
イヤフォンジャックとUSB端子の間の穴はキーホルダーやネックレス、ケースを作ったときの固定用に開けています。ご自由にご使用ください。
基板は鉛フリーで製作していますが、使用後はよく手を洗ってください。
簡単な動作確認方法
動作確認をするおすすめの板磁石を使用する方法です。 板磁石は実は磁石のSNSN...の縞のパターンでできています。 そのため、板磁石をMangepick GOの磁気ヘッドで擦ることで簡単に演奏することができます。 その方法は次の通りです。
- ボタン電池を入れる
- イヤフォンジャックにイヤホンを挿す
- スイッチをONにする
- 水のトラブル系の磁石の黒色の面(広告が印刷されていない面)を磁気ヘッドでいろいろな方向に擦る
- イヤフォンから音が聞こえる
磁気ヘッドの読み込み位置について
磁気ヘッドの読み込み位置は次の図の位置になります。 その位置に磁石の縞や切符やクレジットカードなどの磁気情報が記録されている部分を押し当てて擦ることで、イヤフォンジャックから音の波としてその情報を取り出すことができます。 図のようにMagnepick GOをギターのピックのように磁石(磁気情報)に押し当てた状態で引っ掻いて(スライド)みてください。 磁気情報のパターンやスライドする速度に応じて音の高さが変わります。
磁石の縞(磁気情報)が記録されたもの
磁石の縞があるものとして板磁石以外に電車の切符、クレジットカード、ポイントカード、テレフォンカードなどが挙げられます。 切符やカードを使用する際は使用済みのもの、廃棄前のものをご使用ください。 また音が記録されたカセットテープを引き出して音源として使うのも面白いと思います。 イヤフォンジャックから取り出した音にギターのエフェクターなどを通すこともできます。
磁石のSNSN…の縞(磁化情報)は見ることができませんが、それを確認する手段として磁界観察シートを使うことで確認することができます。
磁界観察シートを使うと、板磁石の磁石の縞パターンも簡単に観察することができます。
切符の磁気情報が記録されている位置も簡単に確認することができます。
電化製品の電磁波ノイズを使った演奏
そのほかに磁気ヘッドを電化製品に近づけてみてください。 電化製品から漏れ出る電磁波ノイズを聞くことができます。 それをそのまま音源として使用しても面白いです。 またボタン電池とイヤフォンを差して、電磁波ノイズ探しをするのも楽しいです。 小型のスピーカーがあると簡単に音を確認することができて大変便利です。
その他(裏話も含む)
Magnepick GOの開発の話を分解のススメのLTで話しました! Mangnepick GOができるまでの製作過程についてお話ししています。 お時間ある方はご覧ください。
#分解のススメ 第2回 LT カサネタリウム Yosuke Hori @kasanetarium パーツ取りとしての分解とメイク
Magnepick GO の他にホールスルーの電子パーツを使用する代わりにUSB給電にのみ対応したMagnepick namoがあります。こちらについても配布を検討しています。
電磁波ノイズを拾う場合は磁気ヘッドの代わりにエナメル線を数十回巻いたものを取り付けることで、それをアンテナにしてノイズを拾うことも可能です。 写真はミシンの下糸用のボビンにエナメル線を20周巻き付けたものをアンテナにしています。 この時はMagnepick nano(しかも基板が大きい試作版)を使っていますがMagnepick GOにももちろん取り付け可能です。
配線図、回路図
PCB(プリント基板)の配線図です。右がMagnepick GO、左がMagnepick GO Lefty です。Leftyはさも右利き用をさも線対照に反転させているだけのように見えますが、ICチップの足は反転できないため、単純な線対照ではありません。LeftyはLeftyで一から配線しています…。また基板裏面の大面積をボタン電池が締めるため、その部分は貫通ビアを使って導線を逃すことができないため(通常は配線が交差する場合は貫通ビアを使って基板の裏面、表面に逃すのですが)、配線はかなり苦労しました…。 ギターのピックのように持てるようにしている点(電子パーツを寄せて親指を置く位置がある点、持った時に音を取り出すイヤフォンジャックができるだけ邪魔にならないように配置している点)がこだわりポイントです。
PCBの回路図です。ボタン電池でもUSB給電でも使えるようにしてる点(USBからの5V給電時に電池からの3Vの回路が自動的に切れるようにしている点)、BTLを選択できるようにしている点がこだわりポイントです。